※ED後。アッシュとルークは仲良く帰還。バチカルでミュウと暮らしている。

 

 

 

 

 

風呂から上がって自分の部屋に戻ると、ベッドの上に青くて丸い物体が転がっていた。その
丸は、微かに上下に動き、小さくプウプウと鳴く。
ああ、こいつはまた俺のベッドに陣取りやがって。
洗ったばかりで、まだ湿っている髪をガシガシ掻きむしってから、大股でベッドへと移動し
た。丸い物体は、まだプウプウ鳴いている。
側まで来てその丸をつつくと、今度は「みゅぅぅ〜…」と鳴きだした。そして直ぐにまたプ
ウプウと鳴く。ううむ、いつもの事ながら、こいつの寝汚さは凄いな。何でつつかれて起き
ないんだ?
疑問に思って、以前アッシュに言ってみた事もあるが、「ペットは飼い主に似るからな」と
鼻で笑われた。…思い出してムカついてきたぞ。まるで俺が寝汚いみたいじゃないか。そり
ゃ確かに、毎朝アッシュに叩き起こされているけどさ。文字通り叩き起こされているって言
うか、最終的には奥義まで出るけどさ。…毎朝の事ながら、よくこの部屋壊れないよな。今
気付いた事実に、何となく感心してしまった。いやいやそうじゃなくて。
「こら、ミュウ。俺が寝られないだろーが。せめてもう少し避けろ」
そう言って、片手でまだ寝ている丸い物体…ミュウを転がした。すると、まるでボールのよ
うに気持ちよく転がって行く。耳を巻き込んで、頭から丸まって寝ているものだから、本当
にボールのようだった。普通に道端に転がっていたら、絶対に子供に蹴られると思うぞ。賭
けてもいい。
転がされても、まだミュウはプウプウと寝ていた。いや、絶対にこいつのが寝汚いって。
それにしても、何でこんなに寝られるんだろうか。仮にも魔物だろ?こんなに無防備でいい
のか?
余計なお世話だとは思うが、全てのチーグル達の今後が心配になってきた。今度遊びに行く
時は、何か身の守る物でも持っていった方が良いのだろうか。でもチーグルサイズの品って
あるのか?
ベッドに転がって考え込んでいたが、すぐ側から聞こえてくるプウプウという音に、何だか
腹が立ってきた。こら、ミュウ!俺は今、お前とその仲間達の平和を真剣に考えていたんだ
ぞ。それをなんだ。お前は呑気にプウプウプウプウと!
苛立ちながら、片手で丸いミュウを更に転がしてやる。上下上下右左右左。…意外と楽しい
かも。
コロコロと転がるミュウは、何処か笑いを誘う。さっきまで腹が立っていたのに、そんな気
持ちは何処かに飛んでいってしまった。
俺はクスクス笑うと、部屋の灯を消して寝る体勢に入る事にした。
暗い部屋の中、聞こえるのはミュウのプウプウという寝息だけ。それにしても頭から丸まっ
ているから、こんな変な寝息になるのだろうか。
そんなくだらない事を考えている間に、早くも睡魔が襲ってきた。どうもこの世界に戻って
きてから、よく眠るようになってしまったようだ。これではミュウを笑えない。
でも、まあいいか。
寝坊したら明日も、まるでそれが日課のように、アッシュが叩き起こしにくるんだろう。そ
れに俺が応戦して、ミュウが必死になって止めるんだ。
とりあえず世界は平和だ。
だから、いいや。
プウプウという寝息を子守歌代わりにして、俺はそのまま眠りの世界へと落ちていった。